介護の悩み―トイレの失敗―

トイレットペーパーとカエル 排泄

 

認知症の有無に関わらず、介護の場面で本当によくある悩みの一つが「トイレの失敗」ですよね。

 

ひと口にトイレの失敗と言っても、そこには様々な原因があります。

 

ここではその原因についてそれぞれの対処法を考えていきたいと思います。

 

そもそも、トイレで排泄するということは

どのようなメカニズムなのか考えたことはありますか?

 

当たり前すぎて考えたことがない方も多いのではないかと思います。

簡単に整理すると下記のようになります。

  • 膀胱に尿が溜まる/直腸に便が溜まる
  • 尿が溜まったこと/直腸に便が溜まったことを脳が認識する(尿意・便意を感じる)
  • トイレまで移動する
  • 衣類を下す
  • トイレに座る
  • 排泄する
  • 後始末(ペーパーの使用、流水、手洗い)

 

トイレの失敗とは、

この7つのうちどこかに支障が出ることで起こると言えます。

1.膀胱に尿が溜まる/直腸に便が溜まるに支障が出ている場合

 

介助される老婆

人間の体は年齢を重ねるにつれて、様々な機能が低下していくのが普通です。

 

何も病気にかかっていなかったとしても、

年齢を重ねるだけで体力が落ちたり、視力が悪くなったりするように、

排尿・排便についても機能が低下していく方が多いです。

 

排尿については、年齢とともに尿を溜めておく膀胱が固くなることで

尿を溜められる量が減り、トイレが近くなり、

間に合わないことで失敗する場合があります。

 

また骨盤底筋という排尿を我慢する時に力を入れる筋力が低下することで、

溜めておきたい尿が漏れてしまう場合もあります。

 

排便については既往歴や体質、性別などによって

便秘傾向と軟便傾向に分かれるのではないかと思います。

 

高齢者の場合、消化機能の低下や筋力低下、運動量の低下によって

便秘傾向の方が多いと言えます。

 

その場合、毎食後に便を柔らかくする薬を飲んでいたり、

「便秘〇日目から〇滴服用する」というようなタイプの下剤を処方されて

服用している方が多いでしょう。

 

便秘傾向なのに排便で失敗してしまう場合、

多くは下剤の使用によって、急激な便意から便の排出までが起こり、

トイレに間に合わないパターンが多いのではないでしょうか。

 

便の形が下痢や下痢に近いことで、

本来便が漏れないように肛門を閉める肛門括約筋が筋力低下していると

やはりトイレに間に合わず失敗してしまうことになります。

 

排尿の失敗や膀胱の固さ、頻尿については、

泌尿器科に相談したり、骨盤底筋を鍛える体操などをすることも有効です。

 

ただ、年齢や状態によって改善が難しい場合も少なくないため、

市販の尿漏れパットなどを上手く使うことも考えるといいと思います。

 

排便の失敗については、まず服用している薬があるか、その効用や副作用に

重複はないかを確認したり、処方している医師に相談してみる方法があります。

 

下剤として処方されている薬だけでなく、

別の目的で処方されている薬の副作用で便が緩くなっている場合もあるためです。

 

また、下剤を服用した時間・排便があった時間の記録を継続してつけておく

下剤を服用してから何時間後に排便があるか、

自分はだいたい便秘何日目で排便があるかなどの傾向がつかめるようになるため、

早めにトイレに座って、排便するための準備をするということも、

失敗を防ぐ一つの方法です。

 

また、便秘自体を改善できれば、下剤の服用が必要なくなるため、

便秘傾向の方は生活習慣の見直しもしてみましょう。

 

多くの方は水分が不足しているため、

水分制限をされている場合を除いて、1500~2000ml

水分をとるように意識するといいと思います。

 

また、体を動かすことも、腸の動きが活発になるため便秘改善の可能性があります。

意識して立ったり座ったり、歩いたりする機会を増やしてみることをおすすめします。

2.尿が溜まったこと/直腸に便が溜まったことをを脳が認識する

高齢者の手

「脳が認識する」に支障が出ている場合、

主に認知症による認知機能の低下で、尿意・便意を感じにくくなったり、

全く感じなくなったりすることでおきるトイレの失敗がこのタイプです。

 

そのほかに、脳梗塞などの後遺症でも感覚に麻痺が残るなどして、

尿意便意が感じにくくなる方もいると思います。

 

この場合、①で挙げた膀胱や骨盤底筋などの機能低下も

同時に起きているかによって、対応は少し変わってきます。

 

機能低下がなく、認知機能の影響のみであれば、

時間を見てトイレに座ることができるように援助が必要となります。

 

その場合、認知症の程度はどれほどなのかによって、

援助がどれほど必要なのかが変わってきます。

 

また、これはトイレまでの移動から後始末まで、

その後の項目にも直結するポイントです。

 

トイレの移動から後始末に支障が出ている場合のほとんどは、

認知症による影響で、支障がでている場合が多いです。

 

トイレの場面でよくある認知症の程度は、この3パターンです。

・「トイレに行きたい」と自覚し訴えることができるがトイレの場所が分からない

(わからないのでトイレまで移動している間に失敗する)

 

・感じている尿・便意が「トイレに行きたい」ことだと認識することはできないが、

トイレを見れば使い方が分かる

(自分が探すべき場所がトイレであるとわからず、たどりつけず途中で失敗する)

 

・感じている尿・便意が「トイレに行きたい」ことだと認識できず、

トイレを見ても使い方も分からない

(トイレにたどり着いても服を下すこと、トイレに座ること、

排泄のためにお腹に力を入れることが理解できず、

トイレの中で立ち尽くして失敗していることもある)

 

対応としてすべてに共通するのは、本人の排泄間隔を把握すること

その感覚の10、15分前くらいを目安に、

トイレに座れるように誘導するということです。

 

人間の身体はよくできたもので、尿・便意を感じられなくなっても

適切な時間間隔でトイレに誘導すると排泄できる方が多いものです。

 

認知症やご本人の性格などによっては、

トイレに座ってもらうこと自体が難しい場合もあるため、

その方の表情や、その時に何をしようとしているかなどをよく観察し、

本人の思いに合わせて声をかけ、トイレへ誘導することが必要になります。

 

認知機能の低下に加え、膀胱の筋力低下も起きている場合は、

身体的な機能低下の程度に合わせていくしかありません。

 

例えば排尿は常時少しずつ出てしまうのか、

ある程度の時間が空くと何の前触れもなく尿漏れしてしまうのか。

どちらも尿漏れパットの使用が必要となりますが、

パットの大きさやトイレ誘導の仕方を排尿状況に合わせることで、

コスト面・介助者負担面、どちらも軽減できる可能性があります。

3.まとめ

人は誰しも、恥ずかしい思いはしたくありません。

大人になってからトイレを失敗することほど、

恥ずかしい、情けないと自分を責めることはないと思います。

 

また、そばで支える家族も、

いくら家族でも排泄物の処理を、日常的に行わなければならないという

物理的な負担に加え、自分の大切な家族が

日常生活に必要な能力を失っていく姿を見るのは、

精神的に負担が大きいものだと思います。

 

何気なくしている排泄について、

メカニズムを整理して、どこでつまづいているのか分析してみることで

ご本人・ご家族、それぞれの辛さが少しでも減るといいな思います。

 

とはいえ、ここで挙げたのは経験談を基にしたアドバイスにすぎません。

 

家族という限られた力だけでなんとかしようとせず、

介護サービスの活用も視野に入れ、家族みんなが笑顔でいられるようにしてくださいね。

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